~豊かな秋の風物詩~
ふるさとの山に囲まれた秋の風物詩
「ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな」
歌人・石川啄木がうたったように、おだや
かな里山に囲まれた、梁川はどこからでも、
山が見える。
その盆地状の地形のなかに、ゆったりと田
畑が広がって、春夏秋冬のゆたかな表情を見
せてくれる。
とくに私が好きなのは、秋の稲刈りがおわり、ホンニョがずらっと並ぶころだ。
はじめてホンニョをみたときは、「あ、タヌキが蓑を着て並んでいる」とおもったものだ。あとから聞くと「穂仁王」が語源らしいが、これも稲穂でできた仁王様、というイメージからできた言葉だとおもう。
梁川も地区によって、ホンニョでなく、ハセがけで稲を干すところもあるが、やはりわたしには、ホンニョが並ぶ風景が梁川らしい、とおもう。
全国的にみても、ハセがけはどこでも見られるが、ホンニョが並ぶ風景は、東北でも一部の地域に限られている。
私の知るかぎり、宮城県北部から岩手県南のあたり、それに山形の米沢平野でしか見た記憶がない。
私もわずかな田を耕しているが、稲は必ずホンニョにして干している。天日干ししたお米は、ほんとうにおいしい。
いまでは、コンバインで一気に稲刈りを済ませてしまう時代だが、やはりいつまでも、ホンニョが並ぶ秋の風景が残ってほしい、と願っている。
(辻村 博夫)